2015年5月30日(土)〜31日(日)
「ラーニングジャーニーin 小値賀島
島暮らし体験(ホームステイ)&持続可能な地域づくりモニターツアー」を開催いたしました。
今回のラーニングジャーニーは、「社会貢献ツーリズム創造事業」(協力:三井物産環境基金)の一環として、社会貢献やツーリズムに興味のある方を対象にした「学びと体験のツアー」のモニターツアーとして開催いたしました。
1泊2日の中で、民泊などで島人と交流し島暮らしを体験いただきながら、持続可能な地域づくりのための小値賀島の活動を学ぶとともに、小値賀島が直面している「磯焼け」など海の課題と、それらの解決に向けての取り組みについて学び、海での実地体験を行いました。
ラーニングジャーニーについて
モニターツアーはまずは座学からスタート。
まずは、おぢかアイランドツーリズムの平田より、今回のモニターツアーの主旨や目的等について説明しました。平田は関東出身の移住者。4年前に「丸の内OL」から「おぢか島OL」になりました。今回のプログラムの企画者です。
今回の「ラーニングジャーニー」は、私たちおぢかアイランドツーリズムにとってとても大切なチャレンジ。
本土から遠く海に浮かぶ小さな離島である小値賀は、さまざまな地域の課題を抱えています。海の磯焼け問題、漂着ゴミの問題、過疎や高齢化による集落の維持、暮らしの中で受け継がれて来た文化の継承の途絶えのおそれ。これらの問題は、島に限らず、多くの地方が抱えている問題といえます。
おぢかアイランドツーリズムは、人口減少や高齢化、という地域の大きな課題を「観光」を通して解決したい。との思いで活動を行っています。今回、私たちの取り組みの次のステップとして、生活する中で見えてくる具体的課題にフォーカスし、観光体験が島の日常にある課題解決と直接結びつくプログラムをつくりたい。それは、地域にとって助けになることは勿論、地域のためになにかしたい。地域のことを学びたいと思って参加してくださる方にとっても大切なことを学ぶプログラムになるのではないか。と考え、今回小値賀町役場産業振興課さんのご協力の元、モニターツアーを開催することになりました。
【はじめに】まずは自己紹介。
まずは参加してくださった皆さん、協力してくださった関係者、そしてスタッフの自己紹介と、このモニターツアーに参加したきっかけや目的を発表しました。
まずはおぢかアイランドツーリズムの末永からごあいさつと自己紹介。末永は生まれも育ちも小値賀。おぢかアイランドツーリズムの事務局長です。この癒しのスマイルと小値賀を愛するあたたかトークでファン多数の人気ガイドでもあります。
末永からは、小さい頃過ごしていた海には海藻が沢山あったこと、今は「磯焼け」で海藻も漁獲高も減った事。自分たちが育った海を取り戻すためになにが出来るかを考えたい。など、島で生まれ育ってきたものとしての思いをお話しました。
今回ラーニングジャーニーには、多数の応募をいただいた中から6名の皆さんに参加いただきました。世界中を旅しながらボランティアプログラムに取り組んでおられる方、地域のために出来ることについて考えておられる方、広域的な観光について取り組まれている方、五島にルーツがあったり、雑誌で小値賀のことを知って小値賀の活動に興味を持ってくださった方、働きながら夜間に町づくりを学びに大学に通われている方など、様々なきっかけでこのラーニングジャーニーを知り、応募してくださいました。おひとりづつ素敵な笑顔で自己紹介。そしてそれぞれの故郷のこと、旅のこと、好きなことを語ってくださいました。
【座学】小値賀島の今を知る。
座学1「小値賀島の現状」 講師:おぢかアイランドツーリズム 高砂樹史
座学ではまず、おぢかアイランドツーリズムの高砂樹史代表取締役より「小値賀島の現状」について講義を行いました。地図から見た小値賀について、排他的経済水域から見る漁業や島の存在について、小値賀の高齢化の問題と人口推移など小値賀町のおかれている状況について。また、おぢかアイランドツーリズムのミッションや活動内容についてご説明しました。
【座学】「磯焼け」と向き合う
「磯焼け」とは、浅い海域に生えているヒジキやワカメ、その他多くの種類の海藻が壊滅的に減少し、サンゴモ(石灰藻)と呼ばれる、うすいピンク色をした固い殻のような海藻が、岩の表面を覆いつくした状態をさします。まるで「海の砂漠化」。これにより魚の食料が減少し生態系に影響を及ぼします。また、浅い海域に生息する鮑などの生物が激減し漁業にも甚大な影響を及ぼします。原因については様々な節がありますが、世界中で起きている問題であり、小値賀も深刻な状況です。大変難しい問題ですが、この解決に向けて、小値賀町では様々な実験や調査を行い、磯場を元の豊穣な海に戻す為の取り組みを行っておられます。今回ラーニングジャーニーでは、この難しい問題を学ぶとともに、小値賀で行っている実験や海藻を増やすための活動に参加するプログラムを企画しました。
座学2 「小値賀の海の状況について」 講師:末永一朗さん
現役の漁師で、小値賀町議会議員の末永一朗さんからは、小値賀の海の現状についてお話いただきました。漁師歴60年の一朗さんにとっても、磯場から海藻が消える「磯焼け」がここまでひどい状態になるとは思っていなかった事、水温の変化による近海でとれる魚種の変化など、現場で実感する海の現実についてお話いただきました。
また、漁獲高等の質問については、小値賀町産業振興課の永井さんからも回答をいただきました。(座学の後の磯場での体験の際にも、田川さんとともに準備から設置まで全般的にサポートしてくださいました。)
座学3 「藻場再生の取り組みと今後の展望」講師:小値賀町役場 田川昌義さん
小値賀町役場職員の田川昌義さんからは、「磯焼け」の現状とそれに対する取り組みについて講義いただきました。田川さんは「磯焼け」の原因調査と藻場再生の為の調査実験を、自らウエットスーツを着て海に入り、県や水産大学、国の独立行政法人のスペシャリストと共に地道な調査を行ってこられました。今回はその調査結果を元に、小値賀の海についてお話くださいました。
講義では600年前から鮑をとっていた記録があることからはじまる小値賀の鮑漁について。かつて単一漁協で鮑の漁獲高日本一であった小値賀が、磯焼けによって鮑などの漁獲高が激減している現実について。環境によって様々な原因が考えられる「磯焼け」の小値賀での原因を究明する為の、海藻の生育調査、小値賀の海藻減少の推移、食害調査、昭和56年から現在までの海水温の変化、海中の栄養分、磯焼けが持続している要因などの調査内容と推測される可能性について。ボランティアダイバーを募集して食害生物の駆除や、海藻のネット防御による回復の様子等を、写真、動画などで詳しく勉強しました。
最後に、これから参加者が海で行う実地作業についての説明があり、海へと向かいました。
【体験】海の課題体験
体験では、座学で学んだ磯焼け対策の取り組みを実際に行いました。
まずは末永から、作業についての説明がありました。
今回の作業は
・珊瑚藻の除去
・食害生物(ガンガゼ類)の駆除
・母藻プレートの設定
・母藻の投入
・鮑稚貝の放流
を行いました。
こちらは珊瑚藻の除去の様子です。岩場に張り付いた非常に固い珊瑚藻や貝の破片などをガリガリと削ります。持っている鉄の道具は大変重くてかなりの重労働ですが、黙々と真剣に作業しておられました。大変な作業ですが、岩場をきれいにすることで、海藻が生えやすくなります。
海藻を設置する場所は、大潮でも海水がかぶる磯場。作業は大潮の干潮時に行います。ポンプで水を抜いて、そこに設置します。
ポンプで水が抜けた場所に、母藻を設置します。いわば、藻の苗のようなもの。こちらが母藻を事前に養殖したプレートです。数種の海藻がくっついて育っています。
これに網をかぶせ、水中ボンドと特殊なビスをつかって磯場に固定します。自転車のカゴのような網は。。。自転車のカゴでした。
これで囲って食害生物の被害を抑えます。この網の中で海藻が生い茂れば、この場所は海藻の育成には適した環境ということになります。そして育った海藻から胞子が飛び立つと、それが新たな命となって周囲の海底で育ちます。
それと同時に、この磯場に海藻が育つよう、胞子が付着した海藻も、小さな網の袋に小分けし、海中に沈めました。
最後に、鮑の稚貝を放流しました。大人になるのにここから4年ほどかかるとのことでした。こんな赤ちゃんを手に取ると、おいしそうというより「愛らしい」ものです。参加者の皆さんは「がんばれよ」といって1匹づつ磯場の影に貝を放ちました。
あいにくの雨と、それによる厳しい寒さでの中、本当に真剣に取り組んでくださり「小値賀の海のためにありがとうございます」と頭の下がる思いでした。岩場をこそげとるという結果の見えにくい作業ですが、これで海藻の生育しやすい環境になります。自然はとても不思議であり、里山ならぬ海も「里海」なのだと改めて感じさせられる作業です。
【おぢか島ガイドツアー/民泊体験】
海プログラムのあとは、おぢか島ガイドツアーで小値賀を見学いただき、その後男性女性に分かれて民泊体験いただきました!小値賀の歴史や全体を知って、実際の小値賀の民家で1泊島暮らし体験。海での疲れを感じさせない好奇心と元気!初対面同士でも、同じ目的をもって活動した仲間だと一緒に民泊することがとても楽しかった。そんな言葉が嬉しく印象的でした。民泊では夜遅くまで盛り上がられたそうです!!
【2日目】ふりかえり。
1泊2日の弾丸モニターツアー。2日目は今回のツアーについての感想や改善点などのご意見を沢山頂戴しました。
参加者の皆さんからのご意見(一部抜粋)
<座学>
・磯やけの因果関係、対策、データ(ビデオ、写真なども)をきちんととられていることが素晴らしいと思った。
・これを踏まえて参加者自身が自分の地域で何かできることを考えられたらいいと思った。
・漁師さんの大変さがよくわかり、これから魚を食べる時はより大切に食べたいと思う。
<海の課題体験プログラム>
・事前の座学もふまえて、目的がありやっていることがわかり、地道な作業の苦労もよくわかった。
・思った以上に貢献感があった。おぢかの海を守って、魚を食べてる、という実感を持てる体験だった。
・磯場での作業内容などをより具体的に事前に知れるとなおよい。イラストや写真で作業内容や服装を表現するとわかりやすいのではと感じた。
<民泊体験>
・初対面同士での民泊(宿泊)だったが、興味や目的が同じメンバーだったのでとてもよかった。
・民泊は想像以上に楽しかったので沢山の人に体験してほしいと思った。ホームページなどに体験談を掲載すれば体験しやすくなるのではないかと感じた。
・民泊での交流がとてもよかった。せっかくの島旅なので分かれて宿泊した参加者同士、受け入れスタッフ、その他、地元の人たちと交流できる場があればさらに良いと思った。
【モニターツアー無事終了】ありがとうございました!!
あっという間の時は過ぎ、お昼のフェリー太古にて帰路へ。民泊のお母さんもお見送りに来て、笑顔と握手で「またくるね!」と再会を誓いました。船が見えなくなるまで互いに手を振ってお別れしました。雨の中にもかかわらず真剣に磯場での活動にご協力いただいた参加者の皆さん、本当にありがとうございました!!!
「社会貢献」と「旅」をつなぐという取り組みへの挑戦はまだまだはじまったばかりですが、今回のツアーを通して確かな手応えと、この取り組みの意義を改めて感じる事が出来ました。
旅する人と島に暮らす人、どちらも「うれしい」と思える、そんな旅を皆さまにご提案出来るよう、これからも活動を続けてまいります。